エクタクロームとF501

 先刻復活したエクタクロームを一本買ってあったのだが、どのカメラに入れて使うのが良いか、いまいち放置気味で。

 エクタクロームは高い。だから、うかつには使いたくないが、使わなければ意味がない。だいたいにおいて、うちにはジャンク拾いでなんとなく動きそう、みたいなカメラがたくさん転がってるわけで、それはそれでいいんだけど、そこにこういうフィルムを装填するのはやはり怖い。

 まあ、一応信頼のあるF3あたりが妥当かなあとか思っていたが、しかし毎度これだな。

 というところで、ふと思い出したのがF501。

 小6のとき、中古で買ったやつだ。中古価格は当時でもかなり安く、お年玉でなんとか買えた。カメラ好きの祖父が、知り合いの詳しい人に中古で買うのにオススメを尋ねたところ勧めてくれたというのがこれ。

 しばらくはふつーに撮っていたんだが、意外と使う機会はなかった。中学に入り、写真から遠ざかったから。でも、まだちゃんと動く。さすがだ。

 というわけで、ここは、F501にエクタクロームを装填すべきでないか。

 ということで、装填してみた。

 

 F501は、ニコンが出した最初のAF一眼レフである。

 ちなみに、この半年前に、外観はそっくりのMF一眼レフ、F301が出ているのだが、これの内部にはピント駆動モーターや測距素子用の空きスペースがあったという話がある。つまり、F501のプロトタイプ。

あるいは、まだ当時は海のものとも山のものともしれないオートフォーカスというシステムに対する、保険という見方もある。つまり、F501がだめなら、F301があるさという話。当時をリアルタイムでは知らないので、当時の評価がどうかは知らない。

 

 いかにもなプラボディというのはAF一眼レフらしいが、形はそこまで冒険していない。

 

 AFは速くも何ともない、というかむしろ遅いし、合わせにくいシーンも多い。今どきの爆速に慣れている人からするとびっくりするかもしれない。

 

 モードは充実していて、プログラムAEも使えるし、絞り優先も使える。プログラムAEにはモードが3本。

 でもまあ、今となっては当たり前だし、なんなら90年代でも当たり前だった。だから安く買えたんだろうけど。

 

 この機種の面白みは、実はプログラムAEのワザ。

 当時はまだ、古いMF時代のレンズ、つまりAiレンズの利用者が多かった。AF第一号なんだから当たり前である。AiレンズでAFができないのは仕方ないとして、これだとプログラムAEを使うことが出来ないという問題がある。要するに、絞り制御ができないわけだ。

 で、採用されたのが瞬間絞り込み測光という手法。シャッターを押すと、絞りを絞った後、再度その状態で光を測光してシャッターの値を決めるという二段構え。

 F501が初採用というわけではなく、MF時代の末期からあった。具体的には、82年発売のFGから86年発売のF501の間、80年代の半ばだけ見られた時代の狭間のやり方というわけ。歴史が見えるのである。

 この測光システムのデメリットはタイムラグがあることで、そのせいもあってF501ののちに発売されたフラッグシップ、F4には採用されなくなった。タイムラグはともかく、そんなわけでF4でプログラムAEは使えない。まあプロ機だからあんまり必要のないモードであると言えば言える。

 普及機でも、このF501の次のF401になると、瞬間絞り込み測光は使われなくなった。レンズ技術の進歩もあったろうし、そうなると前述のタイムラグのデメリットが相対的に目立つ。まあそういうことなんだと思う。