カシオがコンデジから撤退することとか、受光センサーの話とか

もう微妙に旧聞に属するけど、カシオのコンパクトデジカメ事業が終了することが決まったようである。

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カシオはデジカメの登場時から業界をひっぱっていたメーカーという話はカメラの歴史を書いた本でも読んだことがあるので残念な気持ちではあるが、じゃあ使っていたかと言われると結局使っていなかったので残念がるのもおためごかしかもしれない。気軽に持ち歩ける機種として何度か候補として上がったことはあったのだが、絞りがNDフィルターのみというのが結局。あとどっちかというと売り方が女性向けぽかったので。自撮りしないしそもそも人をあんまり撮らないので売りになってるポイントが響かなかったというのもある。

でもまあ、そういえば、と思ったのが、これで1/1.7系の命脈が途絶えたのかな、ということ。

いや、受光センサーサイズの話である。

コンデジの受光部センサーのサイズにもいろいろあるが、今は1/2.3インチと1インチが主流だと思う。高級コンデジの主流が1インチで、超高倍率ズームコンデジとかちょっと特殊なもの(水中用とか)などは1/2.3インチ。これに加えて、2013年くらいまでは、1/1.7インチサイズの受光部を持つコンデジというのがけっこうあった。というか当時は1インチはそれほど主流でなかったからその代わりか。

ニコンのPシリーズとか、キヤノンのGシリーズとか。オリンパスにはシトラスというシリーズがあった。で、カシオも中級機種がこの1/1.7インチであった。

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当時は意識していなかったが、昔けっこう思い切って買ったP7000がそうであった。

こちらは最近なんか衝動買いしてしまったGXR。GXRはユニットが差し替え出来るけど、デフォルトに近い標準ズームのユニットは1/1.7インチである。

ペンタックスからはMX-1というレトロな感じのコンデジが出ていた。かっこいいけどな、と思っていたら店頭からなくなってしまった。ミラーレスだけど、Qシリーズも途中から1/1.7インチになった。

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www.ricoh-imaging.co.jpニコンのP340やキヤノンのG16が店頭から消え、オリンパスのStylusシリーズが店頭から消えて、カシオのEX-ZR4100とかEX-ZR3200とか、そのあたりが店頭で見かける数少ない1/1.7インチ機種になった。そこにきて、カシオのデジカメ撤退である。

まあ別にこういうことを昔から自分が考えていたというわけでもない。気に留めるようになったきっかけは、安原製作所の安原氏が、自サイトのコラムで1/1.7インチの終焉をしのんでいたのを見たときである。そもそも昔は全然コンデジの受光サイズというのを考えてなかったので。表示してある数字と換算焦点距離、全然違うからあてにならないよなあー、程度。

 

ところでこのインチという受光部の大きさを示す単位、わりとぼんやりと「対角線か、フレームのどちらかの辺あたりを指す長さなんだろう」と思っていた。

でも1インチって25.4mmである。じゃあ1インチセンサーのどこが25.4mm?短辺ならフルサイズより大きくなってしまうし、長辺ならAPS-Cサイズ並みだ。じゃあ対角線?

これは最近まで知らなかったのだが、そうでもないらしい。まあそうで、対角線だとしたら、1インチサイズのセンサーのカメラの標準レンズは25.4mmくらいということになる。でも1インチセンサーを持つNikon1マウント用の標準レンズの焦点距離は18.5mmだ。

じゃあこれは何かというと、受光センサーがCCDでもCMOSでもなかった時代の話である。まだこういうものがなかったころ、映像は何を使っていたか。フイルム?もちろんそれはそうだ。でも、カメラや8mmビデオはともかく、ビデオカメラはどうだったか。

これは、真空管を使った撮像管という受像素子を使っていた。これの受光部にはセレンなんかを使った光に感度を持つ半導体がセットされていて、そこで光を感じるようにできていたのである。

そしてこの撮像管にも、いろいろな大きさがあった。受光部が大きいほど広い視野がカバーできるのはフィルムやCCDと同じである。「管」なので、直径によって視野が決まってくる。

で、受像部は、当然管の中におさめられているから、対角線でもその長さは直径より小さくなる。そのため、直径1インチの撮像管だと、ちょうど今の1インチセンサーと同じ対角線16mmの受像部を持った場合と同じ視野が得られた。

 

これは、別にデジカメの時代にはじまったわけではなく、受像素子が撮像管からCCDに変わった時から慣習的に言い慣わされてきたものだそうである。その当時からこの名前は紛らわしかったようで、「映像情報メディア学会誌」という学会誌にも2002年に「光学インチサイズってなに?」という解説記事が掲載されている。この記事によると、だいたい1インチを16mmとすることでおおよその対角長を求めることが出来るのだそうだ。また、インチをつけずに1型、2/3型というような言い方がなされるようになっている、ともあるので、知らない間に話が先祖返りしてしまっているようである。単位がないと気になる人が戻したんだろうか。